「へぇダメづら」



 「へぇダメづら」 (もうダメだろ)
 「おぅ、ダメどぅへぇ」 (あぁ、ダメだもう)

 …って、何がダメなのかさっぱり解りませんが、それはおいといて(おい!)。
 「ずら」と書く人が多いようですが、思うところあってあえて「づら」と書きました。
 共通語に言うところの断定の語尾「…だ」は甲州弁では「…どぅ」になります。 更に推定の語尾「…ろう」は甲州弁では「…ら」となり、これらはほぼ双方向互換です。
 重なって「…だろう」が甲州弁の「…づら」になる過程には「DU」という発音が 絡んでくるものと思われます。現在の日本語には「DU」はなく、 「づ」も「ZU」になってしまっていますが古典発音の「だぢづでど」は 「DA,DI,DU,DE,DO」であったと高校の古文で習いました。
 つまり「…どぅら」と「…づら」は現代語表記では違うもののように見えますが、 どちらも同じ「DURA」なのです。
 「ドカベン」の殿間が使う「いどっこ弁」でも「づら」と表記されています。 水島新司氏がそこまで解って書いていたかは不明ですが、僕はこの表記を支持します。 ちなみに「いどっこ(伊豆っ子)」とは「江戸っ子」の向こうを張ったものだと聞いています。 こういう見栄の張り方もシャレが利いていて割と好きです。 いどっこ弁には「…どぅ」という語尾はなく、岳南(富士山の南)一帯でも「…だら」で、 断定の語尾が「…どぅ」にはならずに「…だ」のまま使われています。 「…どぅ」+「…ら」を「…づら」の成り立ちと考えると、 「…づら」の起源は案外甲州弁かも知れません。

 「へぇ」は共通語の「もう」と互換です。岳南では「ひゃあ」でした。

 更に訛って「へぇダメづれぇ」になってしまう事もあるのが確認されていますが、 どんなメカニズムで「づれ」にまで変形してしまうのかはよく解りません。

2/15'01 加筆分
 「づれぇ」は「づらよ」からの穏便変化のような気がします。
 ちなみに、「どぅ」と書いていますが、少なくとも現在の甲州弁では 「どう」[do:,dou]と発音されています。 これが「どぅ(du)」を介して変化しているというのは全くの私見です。

甲州弁置換共通語
へぇもう
ダメづらダメだろ
(2/10'00 改訂)
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